HOME > 生前から準備すること > 親に終末期医療の希望を聞く重要性
医療は本来、患者の命を救い健康な身体を取り戻す事が目的です。一方で、助かる見込みがない患者に対して、積極的な延命処置を施さず、安らかに最期を迎えて貰う事を目的とした医療もあります。その是非を含め「終末期医療」と呼ばれる概念が、重要視され始めています。
これまで日本の医療現場では、患者に出来る限りの延命措置を行い、少しでも長生きして貰う事が重視されてきました。ですが近年では、残された家族に迷惑を掛けたくないと、延命治療を選択しない患者が増えています。週刊ダイヤモンド2016年8月6日号(死生観1万人調査)に掲載されたアンケートによると、延命治療を希望しない患者は73%にものぼります。
ゆえに親の臨終が迫る前に、あらかじめ終末期医療の希望を聞いておく事はとても重要です。延命治療は、親に苦痛を長引かせる事になりますし、かといって家族が勝手に延命治療を拒否するのは、後々親を見捨てたという罪悪感に悩まされる事になりかねません。家族の間で意見が分かれて、トラブルになる可能性もあります。延命治療の判断を当人に決めてもらっていれば、残された家族の心労は大きく軽減されます。
ちなみに、自分に死期が迫った時に、どのような治療を希望するかを表明しておく事を「リビングウィル」と呼びます。日本では、一般財団法人日本尊厳死協会が、リビングウィルと同種の意味を持つ「尊厳死の宣言書」を発行しています。自身が不治の病で助かる見込みがない場合の延命治療は断る、という内容の宣言書に自身の氏名や住所を記入し、同協会に送付する事で、亡くなるまで保管して貰えます。公証役場で作成しておくと、より信頼性が高まります。
ただし、日本では尊厳死についての法律がないため、残念ながら必ずしも希望通りの最期が迎えられるとは限りません。
延命治療に掛かる費用はケースバイケースですが、2007年に財務省が調査したデータによると、死亡前の1ヵ月にかかる1人当たりの終末期医療費の平均額は112万円という事です。ですが、終末期医療の大半は健康保険が適用されるので、実際の患者の自己負担額は三割(75歳以上は一割)ですし、日本には高額療養費制度があるので、一部の富裕層を除いた大半の人は自己負担額の上限は月額8万円程度です。
短期的にはあまり大きな費用は掛からないですが、延命治療は長ければ1年・2年、あるいはそれ以上の期間続く事もあるので、家族の負担も大きくなります。そして、差額ベッド代など保険適用外の費用もあるので、注意が必要です。
そして最も厄介な事が、延命治療は一度始めると、基本的に途中で止めれないことです。日本の法律では、一度終末期患者に人工呼吸器を取り付けると、死亡するまで外せない事になっています。実際、過去には末期がん患者の人工呼吸器を外した医師が罪に問われたという事例もあります。よって、延命治療は一度始めると終わりが見えず、金銭的な負担が大きくなるリスクがあると覚悟すべきです。
親に終末期医療の希望を聞く重要性まとめ
・自身でリビングウィルを決めておく事で、残された家族が助かる
・延命治療が長引くと金銭的な負担が大きい
・延命治療は一度始めたら途中で止められないので注意
ちなみに、海外では寝たきりの高齢者はほとんどいません。アメリカやヨーロッパでは、終末期を迎えたら無理な延命はしないのが一般的であり、寝たきりになる前に亡くなる事が多いのがその理由です。法律的にも、オランダやベルギーでは積極的安楽死が認められていますし、アメリカでも州によっては合法化されています。日本人の寿命は世界一ですが、それは過剰な延命措置が行われがちな事も影響しているのです。