HOME > 生前から準備すること > 遺言が無効になる事例
自分が亡くなる前に、遺族への遺産分配方法などを書き記しておく書面を遺言書と言います。遺言には法的効力があるため、基本的には自分の死後に遺言内容通りの相続が行われますが、ケースによって遺言が無効になる事があります。以下で、無効になる事例を解説します。
遺言に不備がある場合
遺言が無効になる事例の一つが、遺言書の書き方に不備があった場合です。遺言書は法的効力があるゆえに、決められたルールに則った書き方が必要であり、これが厳守されていない場合の遺言は無効となるので注意が必要です。遺言書の方式は主に3種類ありますが、その中でも自筆証書遺言は不備が起こる可能性が高いです。自筆証書遺言は自分で遺言を作成する方法であり、素人ゆえに誤った書き方をしてしまう事例も多いです。
よくある不備としては、日付の記載がない、署名がない、押印がない、自筆ではない(パソコンなどのデジタル機器で書かれた遺言は無効)などです。誤った遺言を作らないためには、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言(遺言のプロである公証人に遺言を作成してもらう方法)を選ぶべきでしょう。
遺留分を侵害した場合
他に遺言が無効になる事例としては、遺留分を考慮していない内容だった場合です(正確には一部が無効になります)。遺留分とは、法定相続人が相続出来る最低限の財産を保障する制度の事です。遺留分は、配偶者のみの場合は遺産総額の2分の1、配偶者と子供一人の場合はそれぞれ4分の1ずつなど、法定相続人の関係性や人数で割合が決められています。
一部の例外を除いて、基本的には法定相続人の合計で50%が遺留分となり、これが侵害されていた場合は、遺族が裁判所に異議申し立てが出来ます。詳しくは遺言で否定されても家族が相続できる範囲のページを参照下さい。
例えば、愛人に全財産の1億円を相続させるという遺言があった場合、妻や子供は1円も貰えず、その後の生活が困難になる可能性もあります。そんな事態に陥らないように、残された家族は遺留分(この場合は妻と子供の合計で5000万円)だけは遺言内容と関係なく相続出来るように、法律で決まっています。そして遺留分以外は遺言通りの分配になるため、残りの5000万円は愛人が相続する事になります。
被相続人に遺言能力がなかった場合
また、遺言者が認知症などによって遺言能力(正常な判断能力を失った状態の事)がなかった場合、遺族が訴える事で遺言が無効と判断された事例もあります。ただし、その判断は裁判所次第なので、認知症だからといって必ずしも遺言が無効になるとは限りません。余計なトラブルを防ぐためにも、遺言作成前には主治医から健康診断書を貰っておくのが望ましいです。
遺言が無効になる事例まとめ
・遺言書に署名や押印がないなどの不備があった場合は無効になる
・遺族が一定の財産を相続出来る遺留分が法律で認められている
・認知症など正常でない状態で書かれた遺言は無効になるケースもある
遺言は遺産相続に関係する事ですので、遺族間での揉め事が起きやすい点には注意すべきです。行政書士などに相談して作成すると問題が起きにくいです。