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人が亡くなると、その人が所有していた財産は、妻や子供などの法定相続人に分配されます。相続で得られる金額の割合は、被相続人との関係によって法律で定められていますが、被相続人が遺言を残しておく事で、相続の対象者や金額をある程度自由に決める事が出来ます。
無論、遺言など不要な人の方が多いです。しかし相続トラブルを回避出来るケースも多いので、以下で遺言を作る必要がある人はどんな環境・立場の人なのかを解説します。
遺言が必要なケース@〜子供が居ない家庭
まず、絶対に遺言を作る必要があるのは、子供がいない人です。法律的には、被相続人の兄弟も相続人として扱われます。仮に夫が亡くなった場合、財産は妻だけでなく、夫の兄弟にも分配される事になります。具体的には、財産の4分の3を妻が相続し、残りの4分の1を兄弟で等分する事になります(兄弟が二人いればそれぞれ8分の1ずつ)。
もし、妻に財産を全額を残したいのであれば、遺言でそのように記す必要があります。被相続人の兄弟には遺留分がないので、遺言通りに遺産を全て妻に残す事が出来ます。
※遺留分とは、法律で定められた「最低限相続出来る財産の割合」です。仮に、妻や子供が居る男性が、遺言で愛人に財産を全額残すと記した場合、問題になるのは明らかです。そこで妻や子供には、一定割合を確実に相続出来る、遺留分という保証枠が設けられています。遺留分は遺言よりも優先され、おおざっぱに言うと対象者全員の合計で財産の50%になります(一部例外もある)。つまり、夫の財産が1000万円だった場合、妻や子供は合計で500万円は遺留分として確実に得られるのです(残り500万円は遺言通り愛人に渡ります)。
遺言が必要なケースA〜法定相続人以外に遺産を残したい場合
他に、法定相続人でない人に遺産を残したい場合も、遺言が必要です。例えば、息子の妻に長年介護をしてもらったのでお礼をしたいというケースです。
息子の妻は法定相続人ではないので、そのままでは一円も渡る事はありません。ですが遺言で指定しておけば、息子の妻にも遺産を残す事が出来ます。遺言で遺産を残せる対象は近親者だけでなく、愛人やヘルパーさんなど誰でも可能ですが、妻や子供には遺留分があるので、それを侵害しない範囲に注意すべきです。
遺言が必要なケースB〜独身・独り身の人
そして独身で独り身、天涯孤独の人も遺言を作るべきでしょう。法定相続人が誰もいない人が亡くなった場合、財産は国に没収されます。国家に召し上げられても税金同様、どうせろくな事に使われないのですから、「お世話になった人や親しい友人に遺産を残す方が有意義だ」と考えるなら、遺言で記しておく事で相続の対象となります。
遺言が必要なケースC〜連絡が取れない法定相続人がいる場合
もう一つ、法定相続人の中に連絡が取れない人がいる場合も、遺言を作ることが必須だと言えます。遺言がない場合、財産の具体的な分配は遺産分割協議(相続内容を法定相続人で話し合う事)によって決定されます。遺産分割協議は法定相続人が参加する事が義務付けられているため、音信不通の人がいる場合は話し合いが全く進まず、相続が行われないという問題が起きます。
ゆえに、連絡がつかない法定相続人がいる場合は、遺言で予め遺産の分配を記しておく事で、居る遺族だけでスムーズに進められるのです。
テレビなどでよく、何十億円もの遺産相続をめぐって事件が起こるドラマがありますよね。しかし現実には、莫大な遺産によるトラブルは少なく、むしろ数千万円程度の相続トラブルが多いとのデータがあります。
裁判所が発表する司法統計(2015年度版)によると、遺産分割でトラブルが発生し、家庭裁判所が関与する事になったケースでは、財産額1000万円以下の割合は32.3%、1000万円〜5000万円は43.7%となっており、1億円以上はわずか7.7%です。このように、相続トラブルは5000万円以下の小金持ちの家庭が大半なのです。
大金持ちにトラブルが少ないのは、被相続人が生前から準備をしている可能性が高いからです。大金持ちの人は、遺産相続でトラブルが起きると予想出来るため、遺族で揉め事が起きないように遺言を残しているケースが多いのです。一方、財産が数千万円程度の小金持ちだと、相続トラブルが起きる事はあまり考えないため、遺言を残す事が少ないのです。
当然ながら、遺産が1千万円未満の家庭では相続トラブルは少ないです(グラフ上は多く見えるが「分母」となる家庭数が圧倒的に多いので、割合的には少ない)。つまり、相続では貧困層や大金持ちの家での揉め事は少なく、小金持ちが最もトラブルになりやすいという事です。
遺言を作る必要がある人と不要な人まとめ
・遺言を作る必要があるのは、子供がいない夫婦
・本来相続人ではない人に財産を残したい場合も、遺言が必要
・相続でトラブルが多いのは、大金持ちではなく小金持ち
大多数の人は「ウチは財産が少ないからいらないだろ」「わざわざ遺言を作らなくても良い」と思いがちですが、実は大して遺産がない家庭の方がトラブルが多いので、注意が必要です。遺族に迷惑を掛けないためにも、上記の条件に該当する人は、必ず準備しておくべきです。