親や夫が亡くなったら行う手続き
世帯主が死去したら、家族が行わねばならない手続きが沢山あります。

成年後見人の仕組みと役割

HOME > 生前から準備すること > 成年後見人の仕組みと役割

近年、振り込め詐欺や不要な高額品を売りつける訪問販売など、高齢者を狙った悪質な犯罪は後を絶ちません。そんな高齢者を守る仕組みとして、成年後見制度があります。

成年後見制度とは、認知症や精神障害などによって正常な判断が出来なくなってしまった人(制度上「本人」と呼ばれます)に対して、成年後見人と呼ばれる援助者を決めて、法律的に保護する仕組みの事です。

成年後見人の役割は、財産の管理やお金の契約(銀行や証券会社とのやり取り・家賃の支払いやローンの返済など)に関して、本人の代行をすることです。本人が一方的に不利益となる契約を結んでしまった場合には、契約を取り消して白紙に戻すという権利も持っています。成年後見人は、本人が亡くなるまで(もしくは判断能力が回復するまで)役割が続きますので、場合によっては10年以上もの長期間携わる事もあり、非常に責任の重い仕事です。

役割はあくまで権利や財産を守ることに限定され、食事の世話などの「介護」は含みません。

成年後見制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の二種類の仕組みがあります。簡単に言うと、後見人を家庭裁判所に決めて貰うのが法定後見制度で、本人が判断能力のあるうちに予め自身で後見人を決めておくのが任意後見制度です。

法定後見制度は、本人の家族が選任を申し立てする事で、家庭裁判所が最も相応しいと判断した人物を後見人に決定します。申請には、本人の認知症の度合い〜判断能力を医学的に確認するために、医師の診断書(鑑定料は5万円程度)の提出が必要です。なお、法廷後見人の選定は家庭裁判所の職権であり、選ばれた後見人について家族が不服申立てをする事は出来ません。

もう一方の任意後見制度は、本人にまだ判断能力があるうちに、将来を見越して予め後見人を決めておく仕組みです。任意後見人は法定後見人と違って、対象となる人物を本人が自由に決められます。後見人になるために特別な資格は必要無いので、信頼出来る家族から選ぶのが一般的ですが、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する事も可能です。また、後見人は一人だけとは限らず、複数人を選ぶ方法もあります。

成年後見人の代理業務が増えていく!?

成年後見人は財産を管理する立場にありますが、その財産は本人のため以外には使えないと法律になっています。違反した場合は、損害賠償請求を受ける事もあります。

成年後見人が役割を真っ当しているかを判断するために、家族からの申請、もしくは家庭裁判所の判断によって、後見監督人という成年後見人の監督役が選定される場合もあります。認知症で介護が必要な高齢者相手なら、少々財産を横領しても分からないのでは?という悪質な考えは通用せず、不正行為はばれるものだと認識しておくべきです。

なお、最高裁判所の資料によると、青年後見制度の利用者は2015年末時点で19万1335人と、過去5年で申請数は15%増えています。そして親族以外〜司法書士や弁護士、社協(社会福祉協議会)などを後見人に選任する割合が70%と拡大傾向にあります。日本の高齢化率は今後も高まる一方なので、認知症患者など成年後見人が必要な人が増えていくことは確実です。

成年後見人の属性別割合

一方で、弁護士や司法書士などのサムライ業(「〜士」という資格)も、過当競争で利益が取れない事務所も増えていると言います。後見人は裁判所の決定により、本人の財産から月額2万〜6万円程度の基本報酬が得られます。需要サイドからも供給サイドからも、成年後見人の代理業務は今後も拡大していくと思われます。

例えば2015年1月には、さわやか信金や城南信金などの金融機関5社の共同で、日本初となる成年後見事業法人「一般社団法人しんきん成年後見サポート」が設立されています。また雑誌「Wedge(2017年3月号)」によると、司法書士で一人で40〜50人の後見人業務を行う事務所まで現れており、適切に役割が行えるのか疑問があるケースすら出てきているようです。

成年後見人の仕組みと役割まとめ
・成年後見人は本人(判断能力を失った高齢者)の財産を守る事が役割
・家庭裁判所が決める法廷後見人と、本人が自由に決めれる任意後見人がある
・金融機関や司法書士など、成年後見人の代理ビジネスも増えている
・成年後見人の役割は生前までで、死後(葬儀手続きなど)の権限はない

このような成年後見制度ですが、まだ法律的な問題も多く使い勝手が良いとは言えません。例えば後見人が世話を出来るのはあくまで生前の状態で、死亡後の各種手続きは行えないという、厄介な縛りがありました。2016年10月より、亡くなった人の後見人が火葬や埋葬に関する手続きを行えるように法改正されましたが、葬儀に関する権限は未だに認められていません。現状の法律では明らかに不十分なので、更なる規制緩和が求められますね。

当サイトはリンクフリーです。また画像や文章の盗用は禁止致します。文章を引用される際は当サイトへのリンクをお願い致します。
Copyright (C) 2016 tetuzuki-all.com All Rights Reserved.