親や夫が亡くなったら行う手続き
世帯主が死去したら、家族が行わねばならない手続きが沢山あります。

遺産相続の手順と税金(相続税)

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故人が所有していた財産を、残された遺族が受け取る事を遺産相続と呼びます。財産は現金だけでなく、土地や株式、美術品や家財道具なども含まれます。遺産相続と聞くと、お金がもらえてラッキーと思う人もいるかもしれませんが、財産が高額になれば相続税で多くの出費を余儀なくされます。また相続には借金も含まれるため、場合によっては相続放棄した方がお得なケースすらあります。このコーナーでは、遺産相続の手続きの手順と、相続税に関する基礎知識を紹介していきます。

まず、人が亡くなると必ず死亡届を市町村役場に提出せねばなりませんが、役場ではその情報を月末までに管轄する税務署に通知する仕組みになっています。ゆえに、税務署は相続が発生する家庭のことを絶対に見逃しません。特に富裕層の家庭は、法務局で不動産の所有状況を調べたり、金融機関への照会等も入念に行うので、相続税をしらばっくれて逃げ切る事など不可能です。黙ってやり過ごそうとしても無駄です。

相続の対象となる人は、基本的には法律で定められた「法定相続人」です。法定相続人の優先順位は、以下のようになります。

1:配偶者
2:故人の子供
3:故人の父母や祖父母(直系尊属)
4:故人の兄弟姉妹

ただし、正式な遺言書があれば全く血縁関係の無い人でも遺産を相続出来ます。高額な遺産の場合、親族間で相続トラブルに発展する可能性もありますので、出来る事なら相続人は故人が生きているうちに話し合って、遺産の分配を明確に決めておくのが望ましいです。

実は遺産相続のトラブルは富裕層だけの問題ではありません。裁判所に持ち込まれる「遺産分割紛争」のうち約75%は遺産が5000万円以下で、うち30%が1000万円以下だという統計があります。相続が醜い「争続」に発展するのはお金持ちではなく、一般家庭が大半なのです。

遺産相続の手順

以下、遺産相続に関する作業の手順を紹介します。

被相続人が亡くなる=相続の開始
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1:遺言書の有無の確認
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2:相続人の調査・確定
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3:財産の確認
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4:相続方法の決定
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5:遺産分割協議・協議書の作成
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6:遺産の分割および名義変更手続き
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7:相続税の申告・納付
(6と7は順番が入れ替わる場合もあります)

1:遺言書の有無の確認

遺産相続の手順でまず始めに行うべき事は、故人が遺言を残しているかどうかを確認する事です。手続きがある程度進んでから遺言書が見つかると、それまでの手順を全てやり直さねばならない事もあるので、最優先事項です。

ゆえに遺言の存在を見逃さないよう、故人の部屋や身の回りを十分に探す事が重要です。部屋を探すついでに、遺品整理をどのように進めるかも考えておくと、後々役に立ちます。

2:相続人の調査・確定

誰が相続人の対象となっているのかを戸籍調査で確認します。相続人は普段付き合いのある身内だけだと思っていても、意外なところから予期せぬ相続人の存在が発覚する事もあります。入念な調査によって、これまで知られていなかった隠し子がいる事が明らかになったり、あるいは相続人と思っていた人が実は法律的に権利が無かったというようなケースもあり得ます。

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相続人をはっきりさせておかないと、後々裁判沙汰になる大きなトラブルに発展する恐れもあるので特に注意すべきです。

3:財産の確認

故人の財産がどれだけあったのかを確認します。財産とは預貯金だけではなく、株券や不動産、そして借金やローンも含まれます。財産の総額がわかっていないと遺産分配も出来ませんので、出来る限り速やかに確認〜計算するのが望ましいです。

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余談ですが、銀行は預金者が亡くなった事を知ると、その口座を一時的に凍結する事になっています。そのため、電気や水道などの料金を故人の口座からの引き落としにしていた場合は、一時的に支払いが滞る可能性があるため、速やかに変更手続きを行うよう注意が必要です。

4:相続方法の決定

遺産相続の方法は、単純承認・限定承認・相続放棄の三種類があり、どれを選択するかを決定します。単純承認は法律で定められた割合もしくは遺言書に記された内容を全て受け入れて相続する方法、限定承認は財産がある場合だけ相続して借金は拒否する方法、相続放棄は財産も借金も一切相続しない方法です(⇒借金を相続しない方法)。

注意点として、この手順4までの手続きは被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に行うという法律上の期限があります。ゆえにお葬式が済んだら、速やかに相続の手順を行う必要があります。

5:遺産分割協議・協議書の作成

遺産相続は、法律で法定相続分が定められていますし、遺言で相続内容が指定されている場合もあります。しかし、法定相続分や遺言は必ず守らなければいけないという決まりはなく、相続人が話し合って全員が合意すれば、好きなように遺産配分をする事も出来ます。この話し合いを遺産分割協議と言い、その内容を書面にした物が遺産分割協議書です。

相続人が法定相続分もしくは遺言の内容に異議を申し立てなければ、この手順は省いて構わないです。逆に合意が取れない場合は、遺産相続で親族が合意できない時の対処方法に習い、遺産分割調停⇒遺産分割審判という作業を裁判所で行い、決着を付けます。

6:遺産の名義変更手続き

預貯金や株券・不動産・ゴルフ会員権自動車など、故人の名義だった財産を相続人に書き換える作業です。多くの場合、手続きの期限は特に決まっていないので、以下の手順7と順番が入れ換わる場合もあります。

7:相続税の申告・納付

相続した財産が基礎控除の金額(3000万円+法定相続人×600万円)を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。相続税の申告手続きは、被相続人の死後10ヶ月以内に行わなければならないと法律で定められているので、注意が必要です。相続財産が基礎控除内に収まる場合は、この手順は必要ありません。

相続放棄には期限があることに注意!

上記の遺産相続の手順は、必ずしも順番通りに行う必要はなく、例えば1・2・3については同時に取り組んだ方がスムーズに進むでしょう。遺産相続は関わる親族が多く手続きも複雑なので、少しでも無駄を省いて速やかに進める事が重要です。

前述したように、遺産相続では自分が相続人である事を知ってから3ヶ月以内(故人の死後3ヶ月ではない)に、相続を承認するか放棄するかを選択する必要があると法律で定められています。そして相続する場合は、10ヶ月以内に相続税の申告・納税を行う必要があります。

税金に関する基本的な情報は、相続税の計算方法の基本のページや相続税の対象となる資産と計算方法のページにまとめています。また相続税の申告は税理士が必要か?という疑問の声も多いですが、無論、自力で行う事も可能です。税額が高額で税務調査が心配なら、税理士を頼るのも一つの方法ですが、実は税理士のほぼ9割が相続税法を選択していない=相続に詳しくないという現状があります。ゆえに税理士選びにも注意が必要です。

相続で最も大きな金額となるのは不動産ですが、小規模宅地の特例という優遇税制があるため、よほど資産家の豪邸でもない限り、相続税のボーダーラインに届きません。また、税金を支払うお金をすぐに準備できない際には、相続税の物納という制度もあります。但し物納が認められるには厳しい条件があります。

ちなみに、相続税の対策方法として、近年はタワーマンション節税という手法も現れています。マンションの相続税評価額は、敷地全体の面積を専有部分の面積で分配して計算されるため、タワーマンションでは(特に高層階ほど)一戸あたりの評価額が、実体よりもかなり低く算出されるのです。しかし、国税庁がこうした状況を問題視するようになっており、様々な対策法案が出てきています。タワーマンションを節税目的で購入するのは、十分注意すべきです。

2016年にマイナンバー制度が強制執行されたように、国税庁(財務省)は徴税の強化に躍起になっています。相続税なんて「黙っていても分からないだろう」では済まない時代なのです。

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