HOME > 納骨・墓・埋葬 > お墓を解体〜撤去する「墓じまい」について
近年、ライフスタイルの多様化に伴って、先祖代々のお墓を受け継ぐという家系は減少しています。子供が嫁いだのでお墓の継承者がいない、遠方に住んでいて中々お墓参りに行けないなどの理由で、お墓が取り残されてしまうケースは珍しくありません。
お墓を使用しなくなる場合は、お墓を解体・撤去する墓じまいを行う必要があります。墓じまいにかかる費用は大きく分けて、必要書類にかかるお金、お寺の住職に払うお金、石材店に支払うお金の三種類があります。
1.市町村への届け出など必要書類の費用
墓じまいをするには、まず市区町村やお寺からいくつかの証明書をもらっておく必要があります。これまでお墓に遺骨を納骨していた事をお寺に証明してもらう埋葬証明書、新たな受け入れ先が発行する受入証明書、遺骨を別の場所へ移動させる事を市区町村から許可してもらう改葬許可証などです。
これらの書類の申請に必要な費用は、どれも数百円から1000円程度と安価です(改葬許可証の発行は無料となっている市区町村も多いです)。
2.お寺に払うお布施の類
お寺に支払うお金には、まず閉眼法要があります。閉眼法要とは、墓石に宿った故人の魂を抜き取って、普通の石に戻す作業の事です。つまりは単なる宗教行事であるため、費用というより寺へのお布施の一種です。従って決まった金額というのはありませんが、概ね3〜5万円が相場のようです。
他には、離檀料も必要になります。離檀料とは、これまでお墓の管理や供養などをしてもらったお寺に対して、感謝の意を込めて支払う費用の事です。離檀料もお布施ですので金額は様々ですが、相場は10万円前後です。従ってお寺に対するコストは、閉眼法要と離壇料を合わせて15万円程度かかると見積もっておく必要があります。
注意点としては、一部のお寺には悪質な住職もおり、墓じまいを申し出た檀家に百万円以上もの高額な離檀料を請求されたという口コミも報告されています。お寺にとって檀家が減るのは死活問題ですので、ボッタクリの請求を行う悪徳坊主も一部には居るようです。しかし、離檀料は感謝の気持ちを表すお布施であって、法律で定められた制度ではありませんので、お寺の言いなりで済ませる必要はありません。
とはいえ、無用なトラブルは出来るだけ避けたいですから、墓じまいと思わず「商談」のつもりでお寺に値引き交渉を行うのが、大人の対応でしょう。
3.石材店へ支払う墓石の撤去作業にかかる費用
そして、石材店には解体作業費と産業廃棄物処理費など、引越し作業に掛かるお金を支払う事になります。解体作業費は、墓石を解体して区画を整備するための工事費です。産業廃棄物処理費は、役目を終えた墓石を産業廃棄物として処理する為のコストです。
両方合わせて1平米あたり10万円前後が相場ですが、この費用はお寺の環境によって大きく変わる場合もあります。墓石は土台を含めると1トン以上もの重さになる場合が多く、作業には大型のクレーンなどが用いられます。そのため、クレーンの使用が難しいような場所では、作業料金が上乗せされる事もあります。
なお、最近では引き取った墓石を適切に処分せずに不法投棄する悪徳業者もいるらしく「墓の墓場」を生み出しているとして社会問題にもなっています。墓じまいをする際は、依頼する石材店が信頼のおける会社かどうか、注意を払うべきでしょう。
墓じまいの費用まとめ
・お寺に支払う費用は、閉眼法要が3〜5万円、離檀料10万円が相場
・石材店に支払う撤去費用は、小さな墓で10万円程度から
・墓じまい後の遺骨の処理にも費用がかかるので注意
このように、墓じまいにかかる費用は合計で30万円程度が目安となります。加えて、墓じまい後は遺骨の引越し(公営霊園の永代供養墓へ移したり散骨する等)が必要であり、更に費用がかかる事は認識しておくべきです。
ちなみに、新しい場所にお墓を建て直す際に、墓石を流用したいと考える人も居るでしょうが、かえって高コストになる可能性が高いです。墓石はとても重いので運搬費用が高額ですし、そもそも墓石の持ち込みを禁止している墓地も多いです。お墓の引越しと共にコストも抑えたければ、骨仏などの永代供養墓や、墓石の要らない屋内納骨堂を利用すると良いでしょう。