散骨とは、故人の遺骨を粉末状にしたものを、船から海に蒔いて供養する「自然葬」の一つです(山で行う散骨もあります)。近年は死生観も多様化しており、先祖代々のお墓を維持していくのは難しい時代になっています。そうした理由から、お墓を維持・管理しなくても良い方法として、散骨を選ぶ人が徐々に増えているようです。
テレビドラマなどで船の上から遺灰を蒔くシーンは昔からよく見ますが、実は昭和の時代までは、散骨は遺骨遺棄罪に当たるのではないか?と問題視する専門家もいました。しかし1991年及び1998年に、法務省や厚生労働省が違法行為ではないという見解を示した事で、散骨専門の葬儀会社も現れ始め、世論も一変しました。
散骨のメリットは、料金が一回限りで済むうえに安いことです。またお墓や仏壇と違って、管理する手間が必要ないことです。散骨を行う方法は、全国にある散骨会社に依頼するのが一般的です。各会社によって多少の違いはありますが、散骨は大きく分けて3つのやり方があります。
一つ目の方法は、近親者だけで行われる「個人散骨」です。個人散骨は船を貸しきって行われますので、身内だけの水入らずな状態で故人に思いを馳せられる点がメリットです。ただし、チャーターされるのは基本的に小型船ですので、やや窮屈な感じになるという欠点があります。
二つ目は、数グループが一隻の船に乗り合わせて行う「合同散骨」という方法です。全く面識の無い家族と一緒の船に乗る事に多少の抵抗を感じるかもしれませんが、その分チャーター船の料金が分割されて安く済むというメリットがあります。
三つ目は、家族に代わって散骨会社のスタッフが行う「代行散骨」です。病気やケガなどの理由で、どうしても自分では海まで行けないという場合には有難い方法です。散骨会社によっては、散骨した様子を写真に撮って送ってくれるサービスなどもあります。とはいえ、やはり故人との最期の別れを他人任せにするのは、出来れば避けたいでしょう。
散骨の料金は散骨会社によって様々ですが、一例として、比較的料金が安い東京海洋散骨の場合、個人散骨が18万円から、合同散骨が10万円〜、代行散骨が3万5000円〜、となっています。一般的なお墓を利用した納骨の場合、永代使用料が50万円前後(土地によって値段は大きく変わります)、墓石料金が100万円前後、開眼供養が数万円、管理料が年間1万円前後かかりますので、それと比べれば散骨はかなり料金が安い方法ですね。
なお散骨のやり方については、明確な決まりは存在しません。前述の通り、散骨が認められたのは比較的最近の事ですし、違法ではないというのも、あくまで政府がそういう「見解を示した」だけで、自然葬が一切問題ないと述べているのではありません。法律上の定義やガイドラインがある訳ではなく、やり方は散骨会社や各個人のモラルに委ねられています。
ゆえに、散骨会社を利用せずに個人で散骨しても別に問題ありませんし、料金は更に安く済むでしょう。ですが、法律で罰せられないといえども、遺骨は原型を留めずに粉末状に砕く、海に蒔く場合は他人に迷惑がかからない遠方で行う、など最低限のマナーは守るべきです。散骨会社に頼むと必ず遺骨は粉末状にされ、10キロ以上の沖合でまかれるケースが大半です。