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相続税を申告するにあたり、やっかいな存在が税務調査です。税務調査とは、税務署が税金の過少申告や漏れを告発する(自宅へ指摘・検閲に来る)ことです。
人が死去すると、死亡届を役所に提出する必要がありますが(出さないと火葬できない)、役所では管轄の税務署にもその情報が報告されるので、相続の発生は必ず把握されています。
★関連ページ;死亡届と火葬許可申請書を提出する
そして税務署には「KSKシステム(国税総合管理システム)」という仕組みがあり、国税局や全国の税務署をネットワークで結び、納税者の申告に関するデータなどを一括で管理されています。被相続人やその家族の毎年の納税データがあるので、その家庭がどの程度の資産を持っているのか等は、税務署には筒抜けなのです。特に今後はマイナンバー制度が導入されたので、より正確で詳細な情報が知られて、見落としは無くなります。よって多額の遺産相続が発生しているであろう家庭が無申告なままだと、まず間違いなく税務調査に入られるのです。
国税庁の報告によると、2015年に相続税の申告を行った人の内、税務調査が行われた割合は21.2%との事です。そして、税務調査が行われた場合の申告漏れの割合は約82%でした。実はこの「税務調査2割、うち申告漏れ8割」という割合は、過去5年間でほぼ変わっていません。申告漏れが発覚した場合、追徴課税で通常よりも多く税金を払う必要がありますし、悪質な場合は「脱税」と判断される(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)ので注意が必要です。
ちなみに2015年以降、税務署が相続税の申告が必要だと見られる家庭に対し『相続税の申告等についてのご案内』という封書を送ることが増えているようです。中身は「相続税の申告を行わないと大変なことになるよ」という脅し文句的な内容です。一方で納税の対象外となりそうな貧困家庭には「相続税についてのお知らせ」という単なる周知文が送られています。送られてくる文章によって、自分の家庭が税務署にマークされているのか否かが概ね分かるのです。
相続税で問題になりやすいのが、名義預金です。名義預金とは、その銀行口座の名義人と実際にお金を入れる人が異なる預金を指します。例えば、祖父が孫のために、毎月50万円を孫名義の口座に入金していたとします。この場合、名義は孫でも実際には祖父のお金なので「名義預金」とみなされ、祖父が亡くなった際は相続財産と扱われる事になります。
つまり名義預金と見なされれば、相続税の対象になる=追徴課税が取られる訳です。税務署が相続税で最も入念に調査するのが、この名義預金です。子供や孫のフリをして別口座にお金を貯めていても、バレる確率が高いので注意が必要です。もっとも、年間100万円以内の入金であれば、贈与されたと言い張れば(贈与税の掛からない範囲なので)問題にならないでしょう。
ちなみに、税務署は相続税を最も厳しく取り立てようという姿勢です。所得税や法人税は、同じ事業主から毎年納税が発生しますし、彼らは税金のことを勉強して節税策を講じます。不服があれば裁判も辞さない覚悟で挑む事業主も居るので、税務署にとっては厄介な相手です。しかし相続税の対象者は、ほとんどが税金のことを全く知らない素人ですし、納税もその年1回限りの機会なので、恨まれることを恐れずとにかく毟り取ろうという心理が働くといいます。
相続税で税務調査が来る割合まとめ
・税務調査の割合は、相続税申告者のおよそ2割
・税務調査が来た場合、申告漏れが発見される確率は8割以上
・相続税が発生する家庭は税務署がマークしている(見落とされない)
・名義預金も相続税の申告が必要なので注意
2015年の税制改正で、相続税の対象となる死亡者が10万3千人と前年(5万6千人)の二倍近くにまで増えました。折からの財源不足に加えて、法人税率の引き下げなどもあり、政府は相続税の徴税を強化していく事は確実です。そして上記のように、相続税は税務署が遠慮なく毟り取ろうとして来る性質もあるので、納税者としては十分に注意が必要です。