自動車は所有者の名義が登録されている「資産」であるため、相続税の対象となります。そして故人から自動車を相続する場合は、遺族への名義変更が必要です。たとえ、遺族が誰も運転しないので売却や廃棄しようと考えている場合であっても、一旦は遺族の名義に変更した後で改めて売却などの手続きを踏む、という手順が必要なので注意しましょう。
自動車を相続する場合、遺言書による指示がなければ、まずは誰が相続するのかを遺族が話し合って決める必要があります。この話し合いを遺産分割協議と言い、決まった内容を書面化した物は遺産分割協議書と呼ばれます。
遺産相続において、自動車や不動産のような物は、現金のように単純に分配出来ないという問題があります。厳密には、自動車を複数人の共有名義にする事は可能ですが、将来的に廃車や売却の手続きをする場合に名義人全員の同意が必要になるなど、色々と面倒な事が多いので、自動車の名義は誰か一人だけにしておくのがベストです。ゆえに自動車を相続する場合は、現物分割や代償分割といった方法をとるのが一般的です。
現物分割とは、遺産の一部を現物のまま相続する方法です。例えば遺族が兄弟二人で、預貯金100万円と自動車を相続するケースで考えると、兄が自動車・弟が100万円を相続する、といったような分配方法です。
代償分割とは、一人が遺産を相続し、それと同等の金額を残りの相続人に支払う方法です。兄弟二人が100万円相当の自動車を相続する場合、兄が自動車を相続したうえで、50万円を自身で工面して弟に支払う事で、それぞれが50万円ずつ相続したのと同じ事になります。
こうして自動車の相続人が決まったら、陸運局へ出向いて相続の手続き(名義変更)を行います。陸運局は地域ごとの管轄がありますが、ナンバープレート上部に入った地域名(「品川500」とか「川崎300」などの地名)が相当します。
必要書類は、故人の戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、車検証、自動車税申告書、車庫証明書(相続する人が生前の故人と同じ場所に住む場合は不要)などです。そして、陸運局で移転登録申請書(OCRシート1号)、手数料納付書、自動車税申告書を入手し、必要事項を記入して提出すれば完了です。
移転登録申請書 | |
入手場所 | 陸運局 |
提出先 | 陸運局 |
必要書類 | 戸籍謄本・車検証など |
料金 | 500円 |
備考 | 売却や廃棄する場合も手続きが必要 |
ちなみに、自動車のローンの支払いが完了する前に所有者が亡くなった場合は、相続手続きの必要はありません。基本的にローンを支払い終わるまでの自動車は、担保としてディーラー名義にされているからです。従ってローン完済後は相続手続きではなく、名義変更だけでOKです。
自動車の相続方法まとめ
・誰が相続するか遺産分割協議で決める
・自動車の名義は複数人で持たず、現物分割や代償分割を活用する
・分配方法が決まれば、陸運局で名義変更と相続の手続きを行う
・相続せずに売却や廃棄をする場合でも、一旦は遺族に名義変更する必要があるので注意
なお、バイクや原付などナンバープレートの付いた二輪車も、自動車と同様の扱いになるので、上記の相続手続きが必要です。