HOME > 遺産相続と税金 > 相続税の申告は税理士が必要か?報酬の目安は?
相続税は「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除枠が設けられていますので、大多数の人は相続税の申告は必要ありません。実際、相続税の申告割合は4%程度、つまり9割以上の家庭では無縁の存在です。
但し配偶者には1億6千万円までの配偶者控除もありますが、こちらは相続税がゼロの場合でも申告が必要なので注意すべきです。そして、大量の不動産や巨額の遺産を相続して申告が必要な人もいるでしょう。その場合、相続税申告のために税理士に依頼する必要はあるでしょうか?
結論から言うと、相続税の申告で税理士はかならずしも必要ではありません。もちろん、税理士に依頼すれば手間が省けて楽ですし、記入漏れや計算ミス等も無くなるので税務調査に入られる確率は下がります。しかし自分で計算して申告すれば、税理士への費用は不要になります。
相続税を自分で申告する手順としては、まず国税庁のホームページから相続税申告書をダウンロードします。税務署から送られてきた申告書を使用しても構いません。
次に、市区町村役場で戸籍謄本を取得して、相続人全員を確定します。その後、被相続人の所有財産の全てを洗い出します。財産は現金だけでなく、自動車や貴金属などの物や、株や有価証券などの金融商品も含まれます。これらの財産は、基本的に購入した時ではなく、亡くなった際の価格が反映されます。なお、不動産に関しては評価基準が複雑なので注意が必要です。
相続税申告書に上記で算出した財産などの必要事項を記載し、印鑑を押します。この相続税申告書に、遺産分割協議書の写し、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、残高証明書などの必要書類を添えて、税務署へ提出すれば完了です。
ただし、個人で相続税の申告をした場合は、計算の誤りや書類の不備なども多くなりがちです。それらのミスが理由で、税務調査に入られる事も少なくありません。
これらの手続きを難しいと感じたり、税務調査が嫌であれば、税理士に依頼すると良いでしょう。但し当然ですが、税理士を通して申告したからといって、税務調査を100%避けられる訳ではありません。相続税での税理士報酬の目安は概ね20万円、もしくは遺産総額の0.5〜1%程度です。つまり1億円を相続するならば、およそ50〜100万円の報酬が必要という事です。
しかも、実は大半の税理士は相続税に詳しくないという裏事情も知っておくべきでしょう。というのは、選択制である税理士試験の科目の内、相続税法の合格者は1割程度です。しかも税理士は、試験免除で資格を得た人(※注)が55%と過半数なので、全国7万5千人の税理士のうち、相続税法を理解した人間は3千数百人しか居ない計算になります。
※注;税務署に23年(又は28年)以上勤務して、指定研修を修了すれば税理士資格が得られます。この無試験で資格を得た者は「OB税理士」と呼ばれています。
法人税や消費税などと比較して、相続税は依頼数が圧倒的に少ないから、本気で取り組む税理士が少ないのです(相続税の申告数を税理士の数で割ると、年間で一人0.7件程度となる)。
従って、相続税の節税を目的に税理士に依頼しても、期待外れに終わることも多いです。特に不動産の評価額は、査定人によって大きく異なるのが常ですから、より注意が必要です。もし依頼するのであれば「相続税に詳しいこと」をPRしている税理士に限定して探すべきです。
相続税の申告は税理士が必要か?まとめ
・相続税の申告は税理士に頼らず自分で行う事も可能
・遺産の総額から相続人で分配した金額を計算し、相続税申告書を提出する
・税理士に依頼した場合は遺産総額の0.5〜1%程度の報酬が必要
ちなみに税理士法(※)では有償無償を問わず、税理士以外の者が他人の求めに応じて税務相談(申告書の作成など)を行ってはならないと定められています。ゆえに「『税理士資格は持ってないが税金に詳しい知人』に申告書の作成を依頼する」という事は、法律上、認められていないので注意すべきです。
※税務相談を禁じた税理士法第52条は、税理士資格が巨大利権である事の象徴です。実は税務署職員も、23年以上の勤務で税理士資格が得られる特権があるので、利権を侵される事には業界全体で厳しく取り締まっています。よって納税作業を税理士以外に依頼することは、絶対に止めるべきです。