HOME > 死亡後の手続き > 故人の宗派が分からない時の調べ方
家族が亡くなった場合は、速やかに菩提寺へ連絡する必要があります。無宗教であっても多くの日本人は仏式の葬式を行いますので、通夜や葬儀・火葬場での読経は、先祖の家墓がある菩提寺のお坊さんへ依頼する事が基本です。しかし近年は葬祭文化が衰え、檀家と菩提寺の関係が希薄になっており、故人の宗派が分からないという遺族も珍しくない現象です。その場合は、一刻もはやく宗派を調べる事が必要です。
故人の宗派が分からない時の調べ方は、当たり前の話ですが、まずは故人の兄弟や親戚などに聞く事が最優先です。親族が宗派を知っているならば簡単に解決します。逆に故人の宗派が間違っていて、お坊さんの「南無阿弥陀仏」のお経を聞いて「ウチの家系は日蓮宗(南無妙法蓮華経)だぞ!」と親族が怒り出したという恐ろしいトラブルもあったそうですから、親族への宗派の確認は絶対に必要です。
分かる親戚が居なければ、次はお寺に直接聞く方法に移ります。浄土真宗なのか浄土宗なのか等は分からなくても、先祖のお墓がある菩提寺は知っているという家族は居るはずなので、直接お寺に聞ければ問題は起きない訳です。
先祖の家墓の有無すら分からないケースだと、故人の自宅周辺のお寺全てに電話を掛けて「○○町の△△という者が檀家になってませんでしたか?」と尋ねていく事です。ただし、近年は個人情報保護が厳格になっていて、お寺も簡単には教えてくれない場合もあるので、菩提寺が分からないで困っているという事情を話し、理解して貰う必要があるかもしれません。
このような人海戦術を取らなくても、仏壇があれば、故人が何宗だったのか判明する場合が多いです。一般的に、仏壇の中央にはご本尊が祭られており、その両脇には掛け軸が飾られています。ご本尊と掛け軸は宗派によって描かれている画が異なるので、これを確認する事で宗派を判断する事が可能です。
例えば、浄土真宗ではご本尊が阿弥陀如来ですが、真言宗では大日如来、曹洞宗では釈迦如来など、それぞれ描かれている仏様が違います。また、同じ浄土真宗でも、西本願寺の場合は後光の数が8本、東本願寺では後光が6本と、細かな差があるので、大抵判別が可能です。自分で判断できない場合でも、葬儀社に相談すればまず確実に判明するでしょう。
ちなみに文化庁の宗教年鑑によると、日本で最も信者が多い宗派は「浄土真宗(本願寺派)」で約700万人、次に多いのが浄土宗で約600万人だそうです。
また、戒名を使った宗派の調べ方もあります。戒名は、浄土真宗は「釋」、浄土宗は「誉」、日蓮宗は「日」「法」「妙」、真言宗は梵字が入る事が多いなど、それぞれ宗派によって傾向があります。つまり、先祖の戒名が分かれば、家族の宗派が推測出来るという事です。戒名は位牌に刻まれているので、確認も容易です。ただし、これらの文字はあくまでも使われるケースが多いというだけであり、場合によっては宗派が分からない事もある点には注意すべきです。
なお、菩提寺がある事を知らず、勝手に間違った宗派の葬儀を行うと、後に菩提寺の存在が発覚した場合、トラブルになる可能性もあるので注意が必要です。仏教は一神教などと比較すれば相当に柔軟な宗教なので、お葬式が遠方の場合などは「別の宗派のお坊さんにお経を読んで貰ってから、うちの寺で納骨するのも構いません」と言われる僧侶も居る位です。しかし、基本的にはやはり菩提寺を探すべきですし、もし見つからなければ、公営霊園や骨仏などお金の掛からない供養の方法に切り替える良いきっかけだとも言えるでしょう。
故人の宗派が分からない時の調べ方まとめ
・まずは親族に聞いてみる
・仏壇のご本尊および掛け軸で宗派を知る事が出来る
・戒名からの推測も可能だが、確実ではないので注意
なお、近年の日本では特定の宗教や宗旨を信仰しない人が増えてた事から、無宗教葬という葬儀形態も広まっています。無宗教葬とは、その名の通り宗教的な儀式がないお葬式の事で、お坊さんを呼んで読経して貰う必要はありませんし、焼香・合掌・献花などにも決まりはありません。
無宗教葬は、お坊さんを呼ぶ費用がかからない、祭壇が不要など色々と節約出来るので、10万円程度で済ませられる場合もあります。形式が定まっていない分、遺族も参列者も戸惑う事も多いですが、故人の宗派が分からない場合は、思い切って無宗教葬にするのも良いかもしれません。